エネルギー技術ガイド

マイクログリッドとは?
地域の電力自給自足と自治体の取り組み事例

この記事でわかること

  • ・マイクログリッドの仕組みと地域内の電力自給自足
  • ・千葉県睦沢町・宮城県東松島市・北海道上士幌町の事例
  • ・環境省の交付金制度と自治体の補助金
  • ・太陽光+蓄電池+EVの地域シェアリングと2030年の展望
3自治体
紹介事例
100地域
2030年目標
5〜15%
電気代削減
3日以上
停電時供給

マイクログリッドの仕組み

マイクログリッドは、特定の地域内に太陽光発電・蓄電池・EV充電設備などの分散型エネルギーリソースを配置し、地域内で電力の発電・蓄電・消費を完結させる小規模電力網です。通常時は一般の電力系統と接続しながら運用し、災害や停電時には系統から切り離して独立運転(アイランディング)に切り替え、地域内の電力供給を継続します。

従来の電力システムは大規模発電所から長距離の送電線を通じて電力を届ける「集中型」でしたが、マイクログリッドは需要地の近くで発電・消費する「分散型」の仕組みです。送電ロスの削減、再エネの地産地消、災害時のレジリエンス向上など、複数のメリットを同時に実現できます。

マイクログリッドの主な構成要素

発電設備

太陽光発電が中心。バイオマス・小水力・風力なども地域特性に応じて組み合わせます。

蓄電設備

大型蓄電池を設置し、発電量と消費量の差を吸収。家庭用蓄電池を束ねるVPP型も増加中。

EMS(エネルギー管理システム)

CEMS(地域エネルギー管理システム)で発電・蓄電・消費をリアルタイムに最適制御。

配電設備

自営線または既存の配電網を活用して地域内に電力を配分。系統連系/アイランディングの切替機能を持つ。

自治体の取り組み事例

日本国内でマイクログリッドを導入している代表的な自治体を紹介します。

千葉県睦沢町

人口: 約7,000人
先進事例

2019年の台風15号で大規模停電を経験したことをきっかけに、町営のマイクログリッド構築を推進。太陽光発電+蓄電池+地中熱を組み合わせた「むつざわスマートウェルネスタウン」を整備し、災害時にも電力・温水を供給できる仕組みを実現。

太陽光発電+蓄電池+地中熱利用道の駅を核とした地域エネルギーマネジメント災害時に3日間の電力供給が可能

宮城県東松島市

人口: 約39,000人
防災型

東日本大震災の被災経験を踏まえ、防災型マイクログリッドを構築。市内の復興公営住宅エリアに太陽光パネルと蓄電池を設置し、平常時は電気代削減、災害時は避難所への電力供給を行う仕組みを運用中。

復興公営住宅への太陽光+蓄電池設置防災拠点への電力融通機能東北電力と連携した地域マイクログリッド

北海道上士幌町

人口: 約5,000人
農業連携型

酪農が盛んな町の特性を活かし、バイオガス発電+太陽光発電+蓄電池によるマイクログリッドを構築。牛の糞尿から発生するメタンガスで発電し、太陽光と組み合わせることで再エネ比率の大幅な引き上げを実現。EV公用車の導入も進めている。

バイオガス+太陽光のハイブリッド発電農業廃棄物の有効活用EV公用車との連携

自治体の補助金

マイクログリッドの構築には多額の初期投資が必要ですが、国や自治体の補助金・交付金を活用することで事業化のハードルを下げることができます。

地域脱炭素移行・再エネ推進交付金(環境省)

最大50億円

脱炭素先行地域に選定された自治体に対して、最大50億円の交付金が支給されます。マイクログリッドを含む地域脱炭素プロジェクトの設備費・工事費に充当可能。2030年度までに少なくとも100か所の脱炭素先行地域を創出する目標が掲げられています。

地域レジリエンス・脱炭素化を同時実現する公共施設への自立・分散型エネルギー設備等導入推進事業(環境省)

補助率1/2〜2/3

自治体の公共施設(避難所・学校・庁舎等)に太陽光発電+蓄電池を導入するための補助金。補助率は設備費の1/2〜2/3。災害時に避難所として機能する施設が優先されます。

分散型エネルギーインフラプロジェクト(経済産業省・NEDO)

プロジェクトによる

マイクログリッドの技術実証・社会実装を支援する事業。EMS(エネルギー管理システム)の開発や、複数拠点間の電力融通技術の実証に対して補助金が交付されます。

住民のメリット

災害時の電力確保

マイクログリッドが整備された地域では、大規模停電が発生しても地域内の発電・蓄電設備で電力供給が継続されます。睦沢町の事例では3日間の独立電力供給が可能で、冷蔵庫・照明・通信機器・医療機器などを維持できます。

電気代の削減

地域で発電した再エネ電力を域内で消費するため、送配電コストが削減されます。地域新電力を通じた電力供給では、通常の電気料金よりも5〜15%程度安い料金設定が可能です。

地域経済への貢献

電気代として域外に流出していた資金が地域内で循環します。発電設備のメンテナンス雇用や、地域新電力の運営による雇用創出効果もあります。年間数千万円〜数億円の資金が地域内に留まる試算もあります。

再エネ比率の向上

マイクログリッド内の電力は再エネ比率が高いため、住民は特別な手続きなく再エネ電力を使用できます。環境意識の高い住民にとって、脱炭素に貢献しているという満足感も得られます。

太陽光+蓄電池+EVの地域シェアリング

マイクログリッドの次のステップとして、太陽光発電・蓄電池・EVを地域全体でシェアリングする取り組みが始まっています。個人が所有する設備を地域の共有資源として活用することで、マイクログリッドの効率をさらに高めます。

太陽光シェアリング

日当たりの良い住宅の屋根で発電した余剰電力を、日照条件が悪い住宅に融通。地域全体で太陽光発電の恩恵を共有します。

蓄電池シェアリング

各家庭の蓄電池をVPPとして束ね、地域全体の需給調整に活用。個別の蓄電池容量が小さくても、集約すれば大容量の調整力に。

EVシェアリング

地域でEVをカーシェアリングし、移動手段と蓄電リソースを兼用。日中はV2Gで地域に電力を供給し、夜間は太陽光の余剰電力で充電。

今後の展望(2030年に100地域目標)

政府は2030年度までに少なくとも100か所の「脱炭素先行地域」を創出する目標を掲げており、その多くにマイクログリッドの要素が含まれています。

2026年
進行中

脱炭素先行地域の第5次選定。マイクログリッド型の提案が増加傾向。

2027年
予定

ペロブスカイト太陽電池のマイクログリッドへの試験導入開始。軽量パネルで設置場所が拡大。

2028年
予定

EV・V2Gの普及によりマイクログリッドの蓄電リソースが大幅に拡充。

2030年
目標

100地域以上でマイクログリッドまたは類似の分散型エネルギーシステムが稼働する目標。

マイクログリッドは「大規模発電所+長距離送電」という20世紀型の電力システムから、「分散型発電+地産地消」という21世紀型のシステムへの転換を象徴する技術です。太陽光発電や蓄電池のコスト低下、EVの普及、IoT制御技術の進化により、マイクログリッドの経済性は年々向上しています。自治体だけでなく、民間企業が主導するマイクログリッド事業も今後増加が見込まれています。

よくある質問

Qマイクログリッドは個人で構築できますか?
A

個人宅単独でのマイクログリッド構築は、太陽光発電+蓄電池による「自立運転システム」として実現可能です。ただし、複数の住宅や施設を含む本格的なマイクログリッドは、自治体や事業者が主導して電力の融通・制御インフラを整備する必要があります。個人としては、自治体のマイクログリッド事業に参加する形が現実的です。

Qマイクログリッドに参加すると電気代は安くなりますか?
A

多くの事例で住民の電気代削減効果が報告されています。地域で発電した再エネ電力を域内で消費するため、送配電コストが削減され、通常の電気料金よりも5〜15%程度安くなるケースがあります。ただし、初期インフラ整備のコスト分担を求められる場合もあるため、参加条件は事前に確認が必要です。

Qマイクログリッドと通常の電力網は切り替えできますか?
A

はい、マイクログリッドは通常時は一般の電力系統(上位系統)と接続しており、必要に応じて電力をやり取りしています。災害や停電時には自動的に系統から切り離し(アイランディング)、マイクログリッド内の発電・蓄電設備だけで電力供給を継続します。復旧後は再び系統に接続する仕組みです。

Qマイクログリッド導入に必要な補助金はどのように申請しますか?
A

マイクログリッド関連の補助金は自治体が事業主体として申請するケースがほとんどです。個人や企業が単独で申請することは通常ありません。お住まいの自治体がマイクログリッド事業を計画している場合は、住民説明会やパブリックコメントを通じて参加意向を伝えることができます。

QマイクログリッドでEVの充電はできますか?
A

はい、マイクログリッドにEV充電ステーションを組み込む事例が増えています。太陽光で発電した電力でEVを充電し、災害時にはEVのバッテリーから避難所や住宅に電力を供給するV2H・V2Gの活用も進んでいます。上士幌町ではEV公用車をマイクログリッドの蓄電リソースとして活用しています。

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