
卒FITとは?売電終了後の3つの選択肢を解説
この記事でわかること
- ・FIT制度の仕組みと卒FITの意味
- ・卒FIT後の売電価格の実態
- ・3つの選択肢の比較
- ・経済シミュレーションに基づく最適解
FIT(固定価格買取制度)は、太陽光発電で作った余剰電力を国が定めた価格で電力会社が買い取る制度で、住宅用は10年間の固定買取が保証されます。この10年が終わることを「卒FIT」と呼び、2019年以降、毎年数十万件の世帯が卒FITを迎えています。卒FIT後の売電価格は7〜9円/kWhに急落するため、どの選択肢を取るかで年間数万円の差が生じます。このページでは3つの選択肢とその経済比較を解説します。
FIT制度の仕組み
FIT(Feed-in Tariff)制度は2009年に開始された「余剰電力買取制度」を前身とし、2012年に現在の形に再編された制度です。住宅用太陽光発電(10kW未満)の場合、設置した年度に応じた買取価格で10年間、余剰電力を電力会社が買い取ることが義務付けられています。
買取価格は年度ごとに改定されており、制度開始時の2009年度は48円/kWhでしたが、太陽光パネルの価格低下に伴い段階的に引き下げられ、2026年度は16円/kWhです。2009年に設置した世帯は2019年に卒FITを迎え、以降は毎年大量の卒FIT世帯が発生しています。
FIT期間中の買取価格が高い世帯ほど、卒FIT後の売電価格とのギャップが大きくなります。2009年度設置(買取価格48円/kWh)の世帯が卒FIT後に8円/kWhで売電すると、1kWhあたり40円の減収です。年間3,000kWhを売電していた場合、年間12万円の減収になります。
卒FIT後の売電価格
主要電力会社の買取単価(2026年時点)
卒FIT後の売電価格は電力会社が自由に設定しており、2026年時点では7〜9円/kWhが主流です。大手電力会社の買取価格は、東京電力8.5円/kWh、関西電力8.0円/kWh、中部電力8.0円/kWh、九州電力7.0円/kWh、東北電力9.0円/kWhとなっています。
新電力(小売電気事業者)の中にはプレミアム買取を提示している会社もあり、10〜12円/kWh程度の買取単価を設定しているケースがあります。ただし契約条件(特定の電力プランへの加入が必須など)があるため、総合的な電気代との兼ね合いで判断してください。
いずれにしても、FIT期間中の買取価格(過去の世代では26〜48円/kWh)と比べると大幅な減額です。卒FITを前に何もしなければ、自動的に所属する大手電力会社の買取メニューに移行するため、売電収入は確実に下がります。
選択肢1:安い単価で売電を継続する
最もシンプルな選択肢は、卒FIT後もそのまま余剰電力を売電し続けることです。何も手続きをしなければ大手電力会社の卒FITプランに自動移行します。設備投資は不要で、太陽光パネルが稼働し続ける限り、少額ではあっても売電収入は継続します。
この選択肢が向いているのは、初期投資を追加したくない方、蓄電池の設置スペースがない方、太陽光パネルの残存寿命が短い(あと5年以内)方です。年間3,000kWhの売電で8円/kWh = 年間24,000円の収入になります。
デメリットは経済効率の低さです。32円/kWhで購入している電力を8円/kWhで売ることは、1kWhあたり24円の機会損失です。自家消費に切り替えれば、その電力は32円/kWh相当の節約になるため、経済的には自家消費の方が約4倍有利です。
選択肢2:蓄電池を導入して自家消費する
蓄電池を導入して、余剰電力を蓄電→夜間に自家消費する方法です。8円/kWhで売る代わりに32円/kWh相当の電気代削減になるため、経済効果は4倍に跳ね上がります。これが卒FIT世帯にとって最も推奨される選択肢です。
具体的な効果として、年間3,000kWhの余剰電力のうち80%(2,400kWh)を蓄電池で自家消費に回した場合:2,400kWh × 32円 = 76,800円の電気代削減 + 残り600kWh × 8円 = 4,800円の売電収入で、合計81,600円の年間経済効果です。売電のみ(24,000円)と比べて年間57,600円の差が出ます。
蓄電池の導入費用は容量10kWhで130〜180万円(工事費込み)ですが、DR補助金(最大60万円)と自治体補助金を活用すると実質80〜120万円に抑えられます。年間57,600円の追加経済効果で計算すると、蓄電池の投資回収は14〜21年です。蓄電池の寿命(10〜15年)を考えると単純な投資回収は難しいですが、停電対策の価値と電気代のさらなる上昇を考慮すると十分検討に値します。
選択肢3:PPAモデル
PPA(Power Purchase Agreement:電力購入契約)モデルは、PPA事業者が自宅の屋根に太陽光パネルや蓄電池を無償で設置し、発電した電力を一定単価で購入する仕組みです。卒FITの場合は、既存パネルの買い取りまたは新規パネルへの更新をPPA事業者が行い、一定期間(10〜20年)の電力購入契約を結びます。
メリットは初期費用がゼロであることです。設備の所有権はPPA事業者にあるため、メンテナンスや修理も事業者負担です。電力購入単価は電力会社の通常料金より安く設定されるため、電気代の削減効果は得られます。
デメリットは、契約期間が10〜20年と長期にわたること、途中解約に違約金が発生すること、売電収入はPPA事業者に帰属するため自分の収入にならないこと、契約期間中は屋根の改修やリフォームに制約がかかることです。自己資金で蓄電池を購入できる場合は、長期的な経済効果は選択肢2(自家消費)の方が大きいケースが多いです。
経済比較シミュレーション
卒FIT後10年間の累計経済効果
前提条件:年間余剰発電量3,000kWh、電気料金32円/kWh、卒FIT後売電価格8円/kWhで、10年間の累計経済効果を比較します。
選択肢1(売電継続):年間24,000円 × 10年 = 240,000円。追加投資ゼロで得られる手堅い選択です。
選択肢2(蓄電池導入):年間81,600円 × 10年 = 816,000円。蓄電池の実質負担100万円を差し引くと、10年間の純利益は約-184,000円です。ただし停電対策の価値(保険的価値)を加味する必要があります。さらに電気代が今後も上昇した場合は純利益がプラスに転じる可能性があります。
選択肢3(PPA):PPA単価22円/kWhと仮定した場合、年間削減額は(32円-22円)× 3,000kWh = 30,000円 × 10年 = 300,000円。売電継続よりやや有利ですが、蓄電池導入の経済効果には及びません。ただし初期費用ゼロというメリットがあります。
総合的には、資金に余裕があり停電対策も兼ねるなら選択肢2、追加投資をしたくないなら選択肢1、初期費用ゼロで確実に電気代を下げたいなら選択肢3が適しています。
よくある質問
Q卒FIT後に何もしなかったらどうなりますか?
所属する大手電力会社の卒FIT買取プランに自動移行します。売電は継続されますが、買取価格は7〜9円/kWh程度に下がります。手続きは不要ですが、より有利な選択肢がないか検討することを推奨します。
Q卒FITのタイミングはどうやって確認できますか?
電力会社から届く検針票や、マイページの契約情報でFIT契約の開始日を確認できます。開始日から10年後が卒FITの時期です。卒FITの半年〜1年前に電力会社から通知が届くケースもあります。
Q卒FIT後にFITで再契約できますか?
できません。FITの買取期間は1設備につき10年間と定められており、延長や再契約の制度はありません。新規にパネルを設置した場合はその設備に対して新たにFIT認定を受けることが可能ですが、既存パネルでの再契約は不可です。